2015年12月11日金曜日

ジビエ衛生ガイドラインを厳守した野生鳥獣の解体

地域のための野生鳥獣を狩り、安心できる食肉を提供する


 JIRIです。今日はクリエーター科2年生が学ぶ『野生動物管理実習』の2日目、今日も岐阜大学
応用生物科学部附属 野生動物間理学研究センターの森部絢嗣先生による「くくり罠捕獲」の実習
です。

  昨夜は12月とは思えないほど暖かく、豪雨であったため、「捕獲は無理か?」と思いつつ、
罠を仕掛けた現場に向かいます。

 罠を掛ける位置は学生が、罠の設置は森部先生が実施しましたが、どこもニホンジカの足跡は
確認できず、しかも豪雨で寄せ餌も流されて、まったくダメ!

 しかし、仕掛けが正常に作動するかどうかを確認し、もう一度、森部先生が設置し直して、学生が
選んだ場所が良かったかどうかを検証してもらうことになりました。


 罠を設置し、地面をならし、そして塩入の米ぬかを寄せ餌として配置。

     あとは今夜、シカが来ることを願うのみ。この周辺では下の写真の右下に移っている
     シロダモのような臭いのある樹木まで食べられています。



 別の場所でも、アオキは壊滅的に食べられていましたが、昨夜は周辺に来た痕跡はありません。

 森部先生はご自身が設置場所を決めた罠は回収し、学生が選定して森部先生が罠を掛けた
場所だけにして、現場を引き上げました。


 さて、次は揖斐川町谷汲で狩猟や解体に乗り出された所産業株式会社さんを訪問。

ここでは所 竜也さんからお話しをお聞きし、施設見学させて頂きました。所産業株式会社では
「ジビエ事業」として狩猟・製肉(精肉ではありません)をされています。http://www.tokorosangyo.jp/

 岐阜県では、県内で捕獲したイノシシやニホンジカを地域の資源としてとらえ、食用として有効
に活用していくために、 『ぎふジビエ衛生ガイドライン』を平成25年11月1日に施行しました。

 所産業さんはこのガイドラインに基づき、解体処理された獣肉を取り扱っておられます。



 昨夜の豪雨の影響で今朝は全く捕獲されなかったそうですが、前日に捕獲されたニホンジカが
内臓を抜いた状態でおいてありました。

 この施設では狩猟後1時間以内に持ち込まれた動物の内臓摘出、皮剥をする部屋と、枝肉処理
する部屋に分けられていました。


 このニホンジカは両方とも雄鹿ですが、一方(右側)は角があり、一方(左側)は角がありません。
左の角が無い個体は約25kgの子どもです。

  森部先生が歯の観察を指導して下さり、角がない雄個体の歯を診ると、写真のように歯が
先の尖った細長い乳歯ばかりであることが分かります。

 これは今年生まれたニホンジカであると簡単に判別できます。


 もう一頭の雄鹿の歯は永久歯ばかり、これだけでは正確には特定しづらいそうですが、森部先生
の見立てでは、4歳以上とのことで、それより詳しくは第一切歯を削って断面の層を見て判定との
ことでした。
 

 所産業さんでは皮を剥いだ肉は3日間、1~4℃の冷蔵庫で保管し、体表面の水分をある程度
飛ばしてから、解体するそうです。


 別の部屋で枝肉加工したものは真空パックして、冷蔵保存して出荷するものや、冷凍保存する
もの、コロッケなどに加工する物など、さまざまだそうです。
 
 下の写真は、左から背ロース、前足、後ろもも肉です。どれもしっかり真空パックされています。


 岐阜大学では獣肉の安全性を確認しながら地域ブランドに至れるように、捕獲されたシカや
イノシシの①血液、②ロース肉の一部、③耳を提供してもらい、それを食肉衛生検査所に持ち
込んで、寄生虫などをチェックして、安全なジビエ肉のブランド化をはかっておられます。

 また個体によっては住肉胞子虫(じゅうにくほうしちゅう)がいる場合もあるので、冷凍処理など
で死滅させられるようです。



 所産業さんに持ち込まれる獣はニホンジカ  に対し、イノシシ  の割合とのこと。

 今年生まれた小さなイノシシ(体重16kg)の皮剥を実施されましたので、それも見学させて
頂きました。


 このイノシシは最初は16kg、内臓を取り除くと11kg、そして皮を剥いで頭を切除すると6kg

 なってしまいました。しかしこのうち骨は約3kgなので、純粋な肉は3kg程度です。


 次に、揖斐川町谷汲高科の「狩猟採集文化研究所」に戻り、午前中は終了。

 ここで研究所の神棚に挙げてある『鹿食免状(かじきめんじょう)』を見せて頂きました。
これは長野県の諏訪大社のもです。


 ここで本来の授業は終了です。 先生には時間外で、私たちと一緒に遅い昼食をとるため、
先生が捕獲されたニホンジカを一緒に食べさせて頂きました。

 下の写真はニホンジカの背ロースです。

 先生は背ロースを焼き肉用に提供して下さり、ほかにもモモ肉も食べさせて下さいました。

どの肉も全く臭味もなく、肉本来の味わい、そして噛めば噛むほど味がする。


 炭火でじっくり焼くかと思いきや、森部先生はどの程度焼き方なら食用に危険で、どれくらい
焼くと焼き過ぎで硬くなって、今が食べ頃。 というタイミングまで教えて頂けました。

 学生たちには、捕獲した野生鳥獣はしっかり頂いて「山の神」に感謝すると同時に、私たちの
生活が多くの命のお陰で生かされることを実感して欲しいと願っているのです。


 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。