2015年8月4日火曜日

草刈りから見えてくる地域の姿


 
山村づくり講座の12年生は、山村づくり講座の恒例となった「草刈り合宿」(地域生活実習)で、高山市丹生川町旗鉾地域に行ってきました。
 

729日 一日目】

草刈りの現場は、公民館下の耕作放棄地です。近くの方の畑で、以前はトマトなどを栽培されていましたが、所有者は数年前から体調を崩され耕作できない状態でした。今回は、慈雲寺の小林住職のお取り計らいにより、ここで草刈の実習をさせていただきました。
 
深い草の根元にトマト栽培用の支柱があり、草刈機が当たると危険なので取り除きました。


 
勢いよく伸びた夏草(主にススキ)を刈っていきます。
 
 

水路に草が入らないよう手鎌で刈り、壁に根を張っているカワヤナギを切ります。

 

こまめな水分補給も欠かせません。 だいぶさっぱりしました。

 

今日の作業を終え、草刈機の手入れと鎌砥ぎは念入りに行います。
 
 

 
作業が終わり、西瓜をごちそうになりました。たくさん汗をかいた後で、とてもおいしくいただきました。
 

  
慈雲寺で夕食をいただきます。
  
先ほど一緒に草刈りをしていただいた地域の方お二人も同席されたので、お話をすることができました。おひとりの方は、数年前に発生した乗鞍登山口のクマ騒動で、登山客を守るためにクマと格闘し、けがをされたご当人でした。その時の地域の人々の行動から、絆の強さを感じました
 
 
今回草刈りをした場所は、近所の方々も気がかりに思うものの手が出せず、住職も気に掛けていらっしゃいましたが、地域としてここだけ草刈りするわけにもいかず、難しい状況が3年以上続いていたそうです。今回、アカデミーの一行が伺うことが契機となり、動きがありました。ヨソモノが触媒のように作用することがあるということに気づかされました。
 
 


住職の奥様が朴葉寿司を作ってくださいました。干し蕨と姫竹(チシマザサ)の煮物もとてもおいしく、山の恵みをいただきました。
 
 
 

 
730 二日目】

一夜明け、朝のお勤めとして摩訶般若波羅蜜多心経と本尊回向文を唱えたあと、坐禅体験をさせていただきます。
 

 

曹洞宗の坐禅は「只管打坐(しかんたざ)」といい、悟りを開くためのものではなく、ただひたすらに坐るものです。 

警策の受け方を教えていただきます。見本は「とうりょう」こと前原さん。
 
 

 
壁に向かって坐り、心を静かに整えます。 
 
坐禅を組んでいる間、浮かんでくる思いを、そのまま流していきます。色々な音が聞こえても、そのまま流します。10分足らずでしたが、心が集中し、気持ちの良い時間を過ごせました。
 
 
 

お寺の周りの草引きをします。
 

 
朝食をいただいていると、区長さんがご挨拶にお越しくださいました。今回の草刈り合宿が、私たちが想像するよりずっと多くの方々に関わっていただき実現したとわかりました。街中とは違う人々のつながりがあることが実感できます。
 
 

朝食の後は、住職にご案内いただき、山あいにある岩井谷地域の沢上地区にお住まいの尾前ひな子さんをお訪ねしました。
 

ひな子さんは高山市内生まれでご主人と結婚後も高山市内にお住まいでしたが、東京オリンピックの年(昭和39)にご夫婦と子供3人で岩井谷に引っ越し、一人でお住まいだったご主人のお父様と同居されました。当時は何軒もある集落でしたが、今やここで生活しているのは一軒だけになり、お一人で猫と暮らしていらっしゃいます。

本来は、何か不便なことがあればお手伝いをさせていただければと伺ったのですが、「楽しんでやっているし、私がすることがなくなるから」と固く辞退されました。代わりに、ひな子さんが普段歩いていらっしゃる山の中の道をご案内いただくことになりました。
 

 


ひな子さんが一緒でなければとても辿れないような斜面を登っていきます。

 

以前、この辺りは畑が続き、家もあり、見通しがよかったそうですが、拡大造林の時代に植林され、話しをきかなければ、昔からずっと森だったように見えます。
 
 
 
 

森の中に突然現れた地域のお墓です。数百年前から人がこの地に住み続けていた何よりの証です。この一帯だけは植林されませんでしたが、木の根が入り込んで、崩れかけている墓石がありました。いまでは、ひな子さん以外にはお参りに来る人もいないそうです。
 

 
途中、地域の氏神様である乗鞍神社にお参りしました。
立派なお社が建っています。以前は集落のお祭りが行われたそうです。
今では、お参りする人影はありません。

 
 

指定保存樹のイチイの大木が何本もありました。内部は空洞になっています。

 

 
神社の周りも昔は畑でしたが、今では一部の石積みを除き、ほとんど面影がありません。
 
ちなみに、この地域に植林されているスギは、「曽手スギ」という挿し木クローン品種が多く、通直で雪害に強そうな樹形で、葉の色が少し青みがかった見た目も美しい杉です。
地域独自でクローン品種を植林している例は本州では大変珍しいと思います。


 

ひな子さんのお宅にお邪魔しお話を伺いました。
 
以前は牛を飼い、米や野菜も作っていらっしゃったそうです。今は、畑はやめ、栗や山から移植してきたフキ、アサツキなどを家の周りに植えています。
ご実家の高山市山田町で田んぼの土を使って瓦を焼いていたお話、ご主人が木材の仕事をされていた頃に橇で原木を出し高山で製材したお話、以前は今より山の木が少なく開けていて、今はニューヨークで理容師をされているお嬢様が渡米当日に、山岳遭難者が下山してきたので救助ヘリコプターを誘導したお話など、興味深いお話を伺いました。
 

 

周囲に人家もなく夜は明かりもない(電気は通っている)中で、どのように過ごされているのか、街中で育った者には中々想像できません。しかし、不便なことなど気に掛けずに楽しそうにお話し下さるところがとても魅力的で、ひな子さんを訪ねて来られる方が多いのもよくわかります。ずっとお元気でいらっしゃることを心より願っております。

  
 

今回の草刈合宿にあたり色々とお取り計らいいただき、貴重なお話をお聞かせいただきました慈雲寺の小林住職様・奥様と地域の方々にお礼申し上げます。
 
 
 
山村づくり講座2年 西潟
投稿   原島