2015年5月27日水曜日

「憧れる仕事へ!」~ものづくりへ向かう若者の姿に日本の光を感じた・その2~

TSUGI  acoa   ろくろ舎 で学生も教員もお腹いっぱいでしたが・・・

初日の最後の視察先は、ヤマト工芸。案内して頂いたのは永富三基さん。
とても広い工場でしたが、テンポの良い案内に引き込まれながらアッという間の見学時間でした。
工場も広いが、従業員が50人(内正社員が30人)と多い。20代~70代までの幅広い世代の雇用を生んでいるところに共感しました。




ヤマト工芸主力商品は、ゴミ箱、ティッシュボックス、時計。一言で言うと「カワイイ」商品。

日本語の「カワイイ」は重要な価値観の1つでありますが、
50人の従業員を抱える会社が、ユーザーオリエンテッドを大切にした結果なのだと理解しました。





カワイイ理由が、このコーナーの技にもありました。
もともと越前漆器の箱物木地製作をしてきた技術を今の時代に人気の雑貨に活かしているのです。


 
そして、この数字を抜くことが出来る人(職人)を活かす。
箱を持って熱心に説明をしているのが永富さんです。
 
 
 
永富さんには、ヤマト工芸の強みをわかり易く案内して頂けました。
自分が出来ることと社会の求めるもの。時代は移ろうもの。
しかし、先ずは「自分の強み」を客観視できることが、持続可能な仕事につながることを感じました。

永富さんはもとTSUGIの代表であったそうです。そして今もメンバーとして活動をしているそうです。
永富さんは、朝は少し早く出勤し、(任意ではありますが)社長とともに掃除をし8時の始業時間を迎えるそうです。次代を担う若者の新たな働き方にも理解を示す社長に会ってみたいと思いました。




2日目は、越前市役所産業振興部姉崎課長から市の推し進める「越前市工芸の里構想」について伺った後、越前指物協同組合理事長上坂哲夫さんのところへ案内して頂きました。

上坂さんは、越前箪笥を伝統的工芸品指定へと尽力された方です。
これが、制作途中の越前箪笥と上坂さん。現在70代で現役。お弟子さんが1人。




 越前箪笥の特徴は飾り金具がつくこと。しかも猪目(いのめ)が斜めについていることだそうです。
猪目(いのめ)は、古墳時代からつながる日本のもっとも古い文様の1つです。
 
 
拡大するとこんな感じです。猪目(ハートの形)が45°の角度に左右対称に2つみえます。



この伝統を引き継ぐために、なんとこの飾り金具を自作されるそうです。木工の職人が、金工にも取り組んでいるのです。

2階で漆の塗り作業をしていた修行中の長尾 創さん。
もとは地球惑星科学を専攻していたそうです。
それが伝統工芸の世界に!
 
「すべての行程を自身の手でできるようになりたい。」と修行に励んでいます。
なぜ越前箪笥に拘るのか?との質問に長尾さんはこう答えました。
 

「長く続いているモノは良いものだと思う」

 
何が売れるかは社会状況に応じて変化して行くのが常であるが、長尾さんには真逆の方向に強いベクトルを感じました。
すべてを本物に拘り、自身の責任で形にする覚悟と使命感。
ぶれない理由はどこにあるのか?知りたくなりました。
長屋さんは、越前市が支援している「職人長屋」にて、8人の伝統工芸の担い手と共に暮らしているそうです。志を同じくする仲間がいることは大切です。伝統工芸の後継者は日本全体の課題であります。
今度は職人長屋の皆さんと共に話しをしたいと思いました。

 
 
 
 
最後は、Furnitureholicの山口祐弘さん。

山口さんは、先の上坂さんのところで修業され、独立された方です。

工房は、天井が高くとても広いです。右端が山口さんです。
 

前職は機械設計。自身の将来を鉄から木へと変えられました。
「何でも請け負います」という言葉に、技術に対する自信を感じました。
一方
「売るために何をするか?」
「販路は簡単にはできない!」
と、技術だけでは食べていけない・・・と模索する姿がありました。
その象徴がこの写真でしょうか?
何とピンク色の越前箪笥
取手を伸ばしてキャリーバックとなるのです。
シッカリ猪目もあります。いや、これはもうハートですね。
山口さんがファッションショーのために考案したそうです。


「女子高生がピンクのハートをみて「カワイイ」と興味をもってくれればと思って!」


「ファッション×木工」

「自分には関係ない」と切り捨ててもおかしくない組み合わせを、あえて越前箪笥と結びつける柔軟さは、当に山口さんのレジリエンスだと思いました。


以下の言葉も印象に残りましたので、ここに記します。

「身近な人を大切にしたい。」
「先ずは、(山口という)人間を知ってもらうところから・・・」


今回は若者に焦点を当てまとめましたが、それを支える鯖江市・越前市の大人たちの支援があってこそであると思いました。
地方創生が叫ばれている今、若い人の雇用の場をきちんと確保していることが重要であるそうです。切り口がどうであれ両市の大人たちが真摯に取り組んでいる結果がIターン・Uターン人口を増やすことにつながっているのだと感じました。

最後に学生の感想を記します。大人たちの一人として自身の反省も込めて

今回出会った大人達には希望をもらった気がします・・・若者にだけ期待を負わせるのではなく、一緒に挑戦し、ぎりぎりの所でありながらそれを楽しめる発想の持ち主であると


ものづくり講座
松井 勅尚