クリエーター科1年生の「野生動物管理概論」、本日は郡上市で野生鳥獣の捕獲、食肉加工、
調査などを実施している「猪鹿庁」の興膳長官にお願いして、その活動内容と野生鳥獣捕獲の
いくつかを実習させて頂きました。
ちなみに、上の写真の手前は「シカ柵ネット無設置」、山の上は「シカ柵ネット設置」、植生の
違いが分かりますか?
猪鹿庁は「鳥獣被害対策優良活動表彰」も受けた団体であり、その組織は①捜査一課、②ジビ
エ課、③衛生管理課、④山育課、⑤研究課、⑥広報課の6つの機能に分かれています。
彼らは『守って、捕獲できる集落をつくる』ことを目標に、「里山と生きる」ことを目指しています。
鳥獣対策と言えば、防除や追い払いが一般的ですが、そんな防御ではダメ。捕獲した動物の肉は
資源化することが重要と考えています。
その一つが「肉の畑」という発想。
猪鹿庁は『狩猟で地域で食っていく』ことを考えている。
実際にはNPO法人として、①自然体験事業部、②里山保全事業部があり、猪鹿庁は里山保全と
冬の雇用を目的に、猟師の六次産業化を探っています。
実際の活動内容の収入源は、有害駆除、獣肉、獣革、ツアー、調査などがあります。
2009年に狩猟事業に着手し、2010年には解体処理場を持つ坪井さんとの出会い。
半農半猟師への挑戦が始まる。
農家が野生鳥獣捕獲に至るにはハードルがある。
①狩猟免許、 ②捕り方が判らない、 ③捕獲鳥獣の処理に困る。・・・・これに対応しなければ
集落単位での対策、「集落対策」を提言し、集落に組み立て式のオリを貸し出して、その肉を
資源化する・・・・・これが「肉の畑」に化けるのだ。
今日は大和町牧地区のオリ設置を体験させて頂く、自治会長の三浦泰治さんも立ち会って
下さって、学生が組み立てをお手伝い。
意外に簡単に運ぶことができ、かつ組み立ても簡単。 これは猪鹿庁オリジナルのものとの
ことです。
オリが完成したら、入り口の落下装置の説明を興膳さんから受けました。
実際には、オリをつくってから餌付けを念入りに行い、野生鳥獣の警戒心をなくすまで餌付けす
る。しかし、餌付けをやりすぎると、目的以外の動物が来てしまい、結局失敗に終わる。
特に、キツネがつくと、シカは入らなくなってしまう。
オリの内部に金属の入ったテグスを張り、罠の出来具合を学生が何度か確かめました。
次ぎに、センサーカメラとくくり罠、シカ柵ネットを設置してある現場に移動。
下の写真で手前はネットに囲まれているため植生が豊か、しかし奥の方には植生が無く、シカに
食われてただ真っ茶色になった場所が見られる。
ここは郡上漁協が水源林に広葉樹を植える活動をした場所ですが、ネットを張っていないところ
は、シカに餌場を提供してる有様です。
途中、立木に設置したセンサーカメラの内容をチェック。
夜中に来たニホンジカやニホンカモシカも写っています。ニホンジカは5~6頭の集団で、ニホン
カモシカは一頭の単独で訪れています。
くくり罠設置場所では、どこにくくり罠が仕掛けてあるかを棒でチェック。
シカの足になったつもり棒を差し込みますが、1人目かからず、2人目かからず、やはり寄せ餌を
食べるシカの気持ちになって、そして障害物を乗り越えるときにどこに足を置くか? を考えないと
ダメですね。
ネットを設置してある左側と、外側の右側、その植生の繁茂具合は対照的。
ネット無しでは何も育ちません。こんな場所に植樹活動しても、すべてがムダになってしまいま
す。郡上漁協の植樹地はある程度はしっかり守られています。
ネットのある、無しを下側から見ると、ご覧のとおり、くっきり分かれています。
今後、山の皆伐が進行したら、どうしたら良いのでしょう。単に植樹してもムダ、天然更新も
不可能。
あとはニホンジカとニホンカモシカの生息密度が減少することを願うか、減少させるか、防御一方
のネット張りか?・・・・・いずれにせよ、この先の林業には様々な難関が待ちかまえています。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。