2014年6月19日木曜日

「里山景観マイスター養成講座」第1回;耕作放棄田の生き物観察とエコアップの準備作業!


山村づくり講座には、里山の生態系や生活文化を自然科学の視点から研究するスタッフと社会科学の視点から研究するスタッフがいます。両方の視点を取り入れて、「里山の楽しさ美しさを伝え、その保全活用の仕組みを創れるリーダーを育てよう」というのが「里山景観マイスター養成講座」の狙いです。



26年度の第1回を6月15日(日)に開講しました。岐阜県内や関西から集まった10名(1名は都合により欠席)と、学生スタッフ6名、教員3名が参加しました。最初のオリエンテーション講義では、上記の趣旨と本講座の学びの特徴や資格認定の仕組みのお話をした後、皆で自己紹介をしました。

今回の参加者は、既に里山で自然保護や自然体験のインタープリターやコーディネーターを経験されている方が多いので、内容もとても興味深いものでした。「子どもの頃に親しんだ里山の生き物は?」という自己紹介では、「山に入って家の手伝いばかりしていた」という人から、「都市郊外部でザリガニやカエルを捕まえて遊んだ」人、「都心部で自然が少なく、両親の田舎に帰った時に自然の中で遊んだ思い出が強い」人まで様々でした。




さて本題では、植物生態学が専門の柳沢先生から「田んぼの手入れと生物多様性の回復~身近な自然にかかわる楽しさ~」と題して、里山の循環系の中の水田の位置づけ、水田に暮らす植物の生活史、耕作放棄田が増えると生態系やどのように変化し、手入れをすることで(生物学的に)何が変わるか、といったお話をいただきました。



午後は、関市内某地区の谷津田へ出かけて、水田、畦、水路などを細かく見ながら、植物の違いを学び、生息する生き物の観察などを行いました。今では貴重になったホトケドジョウやトノサマガエルなどが見つかり、その愛らしい姿にみな興味津々でした。




さらに谷津田の奥に入ると、耕作放棄されてから10年以上が経ち、ハンノキが生い茂っているテラスが現れます。今回のメインの実習作業は、このハンノキを伐採し、水田の泥を掻き起こすことです。アカデミーの林業実習や里山整備の授業で鍛えた学生スタッフ達はこういう時には頼もしい!樹木を伐る人、運ぶ人、それを積んで整理する人と見事なチームワークで(もちろん参加者も頑張って)作業がどんどんはかどりました。




梅雨の晴れ間の蒸し暑い日でしたので、途中で小まめに休憩を入れましたが、そういう時に吹かれる風の気持ちいいこと。まわりの緑の田園風景にも心が癒されます。作業の合間に見つけたヤゴの種類を同定したり、アカハライモリの生態について、津田先生から解説があったりと、なごやかな中にもしっかりと興味深いお話がありました。




初回の講座はこのようにして終わりましたが、次回は8月最後の週末2日間で、この伐採・掻き起こしした耕作放棄田がどのように変化したか生物調査を行います。また特別講師として守山拓弥先生(宇都宮大学講師、DASH村の[里山博士])をお招きして、専門分野の水田生態や農業土木の視点からコメントを頂くほか、身近な自然の魅力を伝える工夫や市民が関わる仕組みづくり等についても経験をお話いただけると思います。




今回の仕込みが夏にどんな風に花開くか、パワーアップした体制で迎える次回が今から楽しみです。


記 山村づくり講座教員/共催団体「東海サポ人ネット」幹事  嵯峨創平