2013年10月31日木曜日

能登の里山里海に行ってきました(1日目)


ちょっと間が空いてしまいましたが、1012日から14日まで2泊3日の日程で、「里山プロジェクト実習」と「文化的景観論」の合同実習で石川県に行ってきました。最初に訪れたのは能登半島の先端、珠洲市。そこには旧・小泊小学校の校舎を再利用した金沢大学の里山里海自然学校能登学舎があります。学舎内には、能登の里山里海を地域の力で保全・活用するため様々な活動を展開しているNPO法人「能登半島おらっちゃの里山里海」が入っています。名前には「自分たちの地元の自然を自分たちで守ろう」という意味が込められているそうです。1日目は、里山里海自然学校やNPOの立ち上げから関わっていて大学と地域をつなぐ研究や調査をしている能登のキノコ博士・赤石さんに活動の現状や今後の展望などをうかがいました。

着いて最初にやったのは稲架かけでした。稲刈りに参加してないのになぜか集合写真に入る私たち。ちなみに稲架は元・相撲場の骨組みだそうです。

世界農業遺産である能登の自然、生態系保全のために様々な活動をしており、マツタケが採れるような林の手入れや地産地消の市場など、一つの円盤に一つの活動の概要が紹介されていました。

その中のひとつに、休耕田に水を張って水生生物の住める環境を維持するため活動があります。昔は水を張って稲作をしていた田んぼにいたガムシやゲンゴロウなどの水生生物が全国的に絶滅の危機に立たされています。川の水量が少ない能登にはたくさんのため池があり(珠洲市だけで200以上)、そこにとり残される形となった水生生物の生きられる環境を維持するため、おらっちゃは休耕田でお米を作っているそうです。
また棚田の景観と高齢化の進む農業を維持するために「棚田米」をブランド化しようという動きもあります。そして、この日朝からおらっちゃの会員と大学生が稲刈りした稲の束が能登学舎に届き、冒頭の稲架かけになったわけです。

能登学舎の一室に珠洲市の自然や産業を紹介する展示がありました。珠洲市は50年程前までマツを燃料にした瓦産業が盛んでしたが、現在では木を切って燃料にする里山の利用をしていないため、アカマツが広葉樹に置き換わってマツタケがとれなくなっているそうです。そこで、市民と一緒に里山の手入れをしてキノコが採れるように整備をしていきたいというお話もありました。
海での漁やワカメの収穫に使う漁具の展示もありました。里海の生物多様性にかかわる活動もしたいけど難しいとのことでした。山に比べて海は環境保全の効果が見えにくく、活動につなげるための調査が足りないのが現状だそうです。

校舎の屋上にあがるときれいな海をのぞむことができました。能登学舎・校庭の向こう側にある民家から海がとても近くにあるように感じました。
また、ここでは持続可能な里山里海の活用を進める人材育成を目指す『里山里海マイスター養成プログラム』を金沢大学と連携して実施しています。修了者は能登の環境や産物を生かした幅広い分野で活躍していて、環境教育や飲食店などそんな活用法があったか!と刺激を受けるようなアイディアが散りばめられていました。


1日目の宿はしいたけ栽培を生業としてやっておられる農家民宿でした。しいたけのほだ木が予想していた以上にたくさん並んでいて驚きました。お風呂の内装には能登ヒバ(アテ)が一面に使われていてヒノキ風呂のような香りでした。夕飯には肉厚のしいたけや新鮮な魚をおいしくいただき、食事からも岐阜と違って海も山も生活に近い地域なんだなと感じることができました。
以上で1日目の報告を終わります。
山村づくり講座 伊藤恵美