2013年2月14日木曜日

山村づくり講座コロキウム  「里山の生活と生物多様性」(後編)


授業「コロキウム」の紹介、後編です。
コロキウムの時間に行った食事メニューアンケートによって、現代に生きる我々は非常に多くの種類の生き物を食べて暮らしていることが明らかになりました。しかし、それは外国や日本の遠く離れた生産地から、様々な食材を居ながらにして手にすることができるようになったことを反映しているだけかもしれません。それは真に豊かな暮らしと言えるのでしょうか? 現代に暮らす我々は実際に目の前の自然から恵みを受けた経験がどれだけあるのでしょう?

と、いうことで、二つ目のお題は、今まで食べたことのあるもので、「買ってきた物でない食材」かつ「誰がどうやってとってきたものかわかるもの」を挙げなさい、です。要するに「手の届く範囲の自然から食べ物を得る経験」の有無ですね。

班ごとに分かれて用紙に記入していきます


結果は、野生の動植物に限ると、20歳以下の年代で平均25種、21歳以上の学生は平均58種でした。やはり成人の方が、若い人よりも多くの生き物を喰らった経験をお持ちのようです。これは育った環境や、人と自然のつながりが変化していることを表しているのかもしれません。

20歳以下の若者を出身地別にみると、山村34種、ハーフ山村37種、ニュータウン11種、都会19種と、居住地が自然に囲まれているほど、身近な自然から多くの食材を得ている傾向がわかりました。ちなみにグループごとに挙げてもらった食材の生物数を足し合わせたとき、最も多かった分類群は、魚類で140種、次いで植物の80種、菌類(キノコ等)が19種の順でした。釣りが趣味の学生がいた班で特に魚類の種数が増えるという傾向が・・・。

岐阜県ならではの特徴として、すべての班で昆虫を食べていることが挙げられます。これは年代や地域を問わない傾向でした。班によっては、イナゴ・オオスズメバチ・アシナガバチ・クロスズメバチ(ヘボ)の4種類を挙げていたところも・・・。まさに地域の食文化ですね。海のない岐阜県では、昆虫は貴重な蛋白源だったと言われています。


最後に岐阜県の田舎で戦前にどのような食物を食べていたのか、食材はどこから調達していたのか、聞き書きを元にした文献を使ってお話しました。昔は食材は地元の自然や畑からとれるものが中心で、交易によって手に入れていたものは昆布や煮干しなど、海産物が中心でした。山か平野部か、立地に応じて食べているものが違い、食材も地域の自然や食文化を反映していたのですね。

食材を追うことで、里山の暮らしは、まさに地域の自然と地域の文化が融合して成り立っていたことがわかりました。山村づくり講座では、自然科学系と社会科学系の学びを融合させ、総合的に地域を活性化する視点を探るべくこれからも活動を続けていきます。