2013年2月13日水曜日

山村づくり講座コロキウム 「里山の生活と生物多様性」(前編)

 ずいぶん時間が経ってしまいましたが、先月行われた「コロキウム」という授業の紹介をしたいと思います。「コロキウム」は、全学生参加で行われている授業で、各講座持ち回りでそれぞれの講座の特徴を反映し、多彩な内容が提供されています。アカデミーらしい授業のひとつと言えます。

 山村づくり講座の特徴は、社会科学系と自然科学系の学びを融合させ、総合的に地域を活性化する視点を持つ人材を育成することです。今回のコロキウムのテーマは「里山の生活と生物多様性」。とかく敬遠されがちな(?)「生物多様性」に関する概念も、身近な話題から考えて行くと実感できるかもしれません。

 まず会場の学生を出身地でグループ分け。都市都会←→山村という軸だけでなく、「ハーフ山村」という新しい概念も出てきて、みんな混乱気味? でも学生にとっては自分の育ってきた環境について考えるきっかけになっていたようです。



 そのほか、「お正月のお雑煮について」や「餅の形」などでグループ分けをして、それぞれの地域の食文化について考えました。


 さて、ここから先が本番です。一つ目のお題は、「我々はどれだけ多くの生き物を食べているか?」です。学生を年代と出身地で班分けし、それぞれの班で食べた今朝の朝食と昨晩の夕食のメニューを出し合ってもらいました。そのうえで、メニューを食材に分解、さらに食材を元になっている生物に分解してもらいます。

 たとえば、味噌汁(メニュー)→味噌(食材)+豆腐(食材)+小松菜(食材)+煮干し(食材)→ダイズ(植物)+コウジカビ(菌類)+コマツナ(植物)+カタクチイワシ(魚類)、といった感じです。つまりお味噌汁というメニューは4種の生物からできているということになります。

 結果ですが、最高記録を叩きだした人は、朝食37種+夕食15種でした! 我々は思ったよりもかなり多くの種類の生物を食べているようです。ちなみに愛知県の給食の献立から調べた年間の食材生物種の数は、1951年30種、1973年34種、1984年で57種です。給食は年間を通じての種数なので、個人の一日の夕食と朝食では直接の比較はできませんが、それにしても多いですね。つまり現代の我々は昔に比べて非常に多くの生物のお世話になっていることがわかりました。

 この食材のケースのように、人間が生態系から得ている利益のことを「生態系サービス」といい、生物多様性が重要であるひとつの根拠とされています。なぜなら生物の種数の少ない(生物多様性の低い)生態系からは、限られた食材しか得られないからです。

ちなみに一人暮らしの学生で朝食を抜いている人が多いことも判明! みんな朝食は食べて来ようね。


 ここで終わってしまっては、テーマのうちの半分を消化したに過ぎません。
非常に多くの生き物のお世話になっている我々ですが、実際に直接自然から恵みを受けているんでしょうか? 記事が長くなったので、そのあたりは次回後編にて紹介しようと思います。