2012年9月27日木曜日

「美濃町の家」 地域住宅計画賞 作品賞受賞

「美濃町の家」プロジェクトが第7回地域住宅計画賞の作品賞を受賞しました。
この賞は1983年に国土交通省が始めた地域住宅計画(HOPE計画)を根底に、気候風土や地場産材を活用した地域性を持った住宅を表彰するものです。

「美濃町の家 重伝建地区周辺地域の町並み再生」

「美濃町の家」は、重伝建地区"うだつの町並み"から道を一本隔てた通りに位置し、袖卯建と黒漆喰が特徴で、趣のある佇まいを残しています。周囲にも重伝建地区内に匹敵する立派な建物も現存しますが、改修助成や建築規制が無いため、安易に建て替えが進み、無機質な3階建の建物も目立ちます。
 綺麗に整えられ維持される重伝建地区と少し雑然とする周辺地域。
 今回、重伝建地区の外縁部に、適切なコストで、使い勝手や各種性能を向上させ、当時の面影を残すひとつのモデルとして計画しました。工事途中や竣工後に見学会を開催するなど、地域に向けての情報発信を行いました。

これまでの流れを少し思い出してみます。


このプロジェクトは、2008年9月に家政大学 手嶋先生率いる学生と一緒に始まり、7期生の木造建築スタジオの学生と木造建築病理学に基づく調査を行いました。
しばらく空き家になっていたため、雨漏りや劣化も見られました。


詳細調査では、畳を上げて、家の中で地盤調査も行いました。計画をたてる前に十分に現状の様子を把握する必要があります。特に地盤や基礎は、建物ができてから触ることが非常に難しい場所です。特に気を使います。

調査結果をもとに家政大学の手嶋先生の率いる学生さんと徹夜で計画案を練ったことを思い出します。その後住まい手のMさんに改修計画案のプレゼンをさせていただきました。
当時の様子は以前のブログにも書いてました。



その後、木造建築病理学 に基づく改修ということで、長期優良住宅先導事業の採択も受け、2009年から本格的に計画が動き出し、9期生の学生と設計に携わりました。 



構造はとても大事です。地盤調査から得られた情報と建物荷重た必要な構造耐力を考えて、室内にベタ基礎を作りました。


既存の柱の足元は、少し切断し、鉄骨で受け、鉄骨ごとコンクリートの中に埋め込んでしまいます。


工事後半では、アカデミー学生と東京家政大の学生、住まい手の方が、職人さん指導のもと、珪藻土塗りや床塗を行いました。


前面の道路に面して設けられた縁側です。当時(明治元年)のままの面影を残しています。


 中に置かれる家具は、アカデミー1期生のAC CRAFTの石井さん作のテーブルと、ものづくり講座の卒業研究で提案・製作を行った椅子が置かれます。

 住まい手のMさんはじめ、工事に携わっていただいた職人の方々、アカデミーや家政大学の学生さん、ほかにも紹介しきれない方々がこのプロジェクトに関わっていただきました。
 このプロジェクトに携わっていただいた方々皆さんのおかげで受賞できたものです。


地域の魅力は、個々の建物だけではなく、連続している建物の表情や、そこに住む人々の活動によって育まれていくものです。「美濃町の家」が、伝建地区と周辺地区をつなぐ核となることを期待しています。