2012年1月18日水曜日

 岐阜県では、県下の森林の施業集約化の核となる人材育成を目指して、約8ヶ月間にわたる施業プランナー研修を岐阜県立森林文化アカデミーで実施しています。

 岐阜県の施業プランナー研修は(1)養成基礎研修 と (2)ステップアップ研修の2つがあり、今回は「第7回 施業プランナー ステップアップ 研修」を開催しました。

 本日のお題目は「森林・林業再生プランと森林経営計画の概要」として県庁森林整備課の藤下定幸技術課長補佐から、「国内外の林業・木材市場の動向」として林材ライターの赤堀楠雄さんにご講義して頂きました。

 最初は、平成23年度の国が進める准フォレスターの講師でもある藤下さんから、森林・林業再生プランの概要を説明され、森林計画制度が具体的にどのように変革するのか。今後市町村の仕事の内容がどうなるのかをお聞きしました。

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 これまでの森林計画制度では、(1)全国森林計画 (2)地域森林計画 (3)市町村森林整備計画 (4)施業計画となっていました。
 しかしこの計画自体が上位計画のひな形を基にした机上のものであることも多かったので、今後は市町村が森林管理委員会などと一緒になって、独自のマスタープランを作成する方向となりつつあります。

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 また、これまでの森林施業計画は、「森林所有者が権限を有する森林の内、施業を行う森林について作成する計画でもよかったです。(つまり歯抜け状態に点在した林地を結んだ団地設定が可能でした。)
 しかし今後は、森林経営計画になるので、「森林所有者または森林経営の受託者が作成する面的なまとまりの下で森林経営を行う計画」と変わります。

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 研修参加者は大幅な変更に、どのように集約化に取り組むべきか頭を悩ませていました。今後は林班単位(約50ha)でその林班の1/2以上の所有者から同意を得て、面的な計画を立てる必要があります。


 午後からは赤堀楠雄さんの講義、赤堀さんは「現代林業」「木材情報」などの記者としても有名で、著者にも「よくわかる最新木材のきほんと用途」、「変わる住宅建築と国産材流通」などがあります。

 赤堀さんからは最近の素材や製材の流通の変革を模式図や工場事例を挙げてわかりやすく解説して下さいました。

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 例えばプレカット工場は仕口を加工するだけでなく、重要なのは長さである。工場によっては長さ別に1550段の部材収納ラックを備えて、注文に合わせてそうした木材が出てくる。ただしこうした工場は無垢材ではなく、集成材やLVL材を使っている。
 製材工場も大規模化が著しい。他にも曲がり材を専門に挽く、カーブ製材の工場もある。

 平成22年までに目指してきた「新生産システム」これは、どうしてうまくいかなかったのか?

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 当時は、想定したほどの成果が上がらなかった。これは山元と製材の間をつなぐシステムがなかったからだ。
 山側も森林整備だけに目を向けた山づくりでなく、もっと木材生産に目を向けた山づくりが必要なのかもしれない。

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 この絵は左上のものは角材に挽くには少し径級が小さい丸太を角材にしたたため、斜線部分のような樹皮(「のた」)がついたものです。ある製材工場ではこうした角材も挽いて、それだけ選別するそうです。

 なぜなら、大工さんが建築現場で加工するときに、「のた」の部分は切り落として加工するので、実際には何の影響もない。一般的には柱材に製材する径級よりも末口が小さければ、他の用途に回されて安価に買いたたかれるか。取引されないことが多くあります。
 しかし木材価格が多少安くなっても、有効利用できるようにして、山元にお金を返せる努力をすることが重要なのです。


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 次は木造建築での利用の話です。私たちは木材をたくさん使った木造建築が良いと考えているが、設計士によっては「できるだけ木材を少なくして、木材と親しみ、木材の良さを知って頂く設計をしたい」という方もいる。

 また他の事例では、高島市立朽木小学校の体育館の事例では、特殊な工法で木材を大量に使用してある。多くの木造施設は、デザインや斬新さなどといったことに注目が行き、利用者側にとってメリットのある提案がなされていない。しかしこの学校の体育館は本当に利用者のメリットも随所に考えられていた。

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 最後に、昨年末に視察されたドイツやオーストリアの話もして下さいました。これを書くと長くなるので省略しますが、どの話も面白く、来年も是非にもお願いしたいと考えた次第です。

 藤下さんも、赤堀さんも、本当に有り難うございました。

           報告ジリこと川尻秀樹