2011年8月26日金曜日

木造建築病理学について

こんにちは。今週1週間ブログ担当の小原です。6日目の本日もどうぞお付き合い下さい。

本日のお話しは、「木造建築病理学」についてです。昨日「木造建築病理学」に関する問い合わせがありまして、ちょうどいいタイミングでの入稿となりました。「木造建築病理学」とは、改修理論や技術を体系的に学ぶことができる授業科目です。

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◆建築病理学とは

ヨーロッパやアメリカでは、古くから歴史的建築物の補修が盛んであり、経験的、個別的にノウハウが蓄えられてきました。建築病理学の目的は、全ての建築物に生じる欠陥、不具合の技術的側面を考究すること、建築設計、施工、使用過程における重大な欠陥、不具合を診断し、予防するための情報を提供することとしています。
イギリスでは、建築病理学を用いて、1)既存建築物の劣化診断、補修設計、2)建物の担保価値の評価、3)建物の適法性評価、4)過去の修繕効果の検証、5)維持管理・補修工事の根拠提供、6)建物の用途変更時の根拠提供、7)修繕義務違反建物に関する法的措置の根拠提供などに応用的利用がなされています。このような状況の中、イギリスの25大学には、建築病理学の講座があり、教育も充実しています。

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◆木造建築病理学課程について

欧米に比べ日本では住宅の診断業務がビジネスとして十分拡大してはいませんが、今後の建物の高寿命化と性能の確保の必要性から、必要不可欠な技術体系であると考えられます。そこで英国での建築病理学とその関連資格を紹介している中島正夫先生(関東学院大学)監修のもと、2006年度に授業科目として岐阜県立森林文化アカデミーでは「木造建築病理学課程」を設置しました。これは教育機関では日本初の設置となります。この「木造建築病理学課程」において、これらの知識・技術を修得することができます。
木造建築病理学課程は、「木造建築病理学」(講義・実習、60時間)及び「木造建築病理学実習」(実習、60時間)の計120時間からなっています。この課程の開講期間は、2年間に渡る内容となっています。実物件での調査を3回以上参加し、診断レポートを作成することで実践力を身につけます。さらに、これらの講義及び実習を受講した後、中間試験及び最終試験という2回の試験があります。

2008年度から科目等履修生(一般の方などが科目単位で授業を受講できる制度です)を受け入れており、これまで37名の設計士や工務店など実務に携わる方や、建築関連の行政の方などアカデミー本科の学生ではない方も受講しています。本来はアカデミー本科の学生を増やしたいので、「科目等履修生」を積極的には宣伝してこなかった経緯があります。

今後も多分そうだと思いますので、「科目等履修生」は口コミのみでの宣伝と致しますが、科目等履修生の申し込みは、前年度の3月1日となっております。したがいまして、平成24年度4月からの木造建築病理学課程の科目等履修生に入学希望の方は入学願書、その他必要書類、入学試験料などを揃えた上で、平成24年3月1日必着で書類を御送付して戴く必要があります。

木造建築病理学課程では、以下のような授業構成となっています。1)建物の長寿命化の必要性、2)建築病理学とは、3)耐震調査の目的・内容とその手順、4)各種検査機器と使用法、5)構造的不具合の原因と対応策、6)木材の腐朽と防腐、7)現場における検査手順、8)報告書作成法、9)床・壁・屋根、その他の不具合とその対応、10)建築病理学の必要性、11)床下環境について~防蟻対策、12)温熱環境の改善と対策、13)法規・制度関連、14)室内空気質の改善と対策、15)契約依頼者との契約上の注意 などです。

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◆住宅医スクールについて

木造建築病理学を流布するため、「住宅医ネットワーク」さんが「木造建築病理学」に関する活動を同時展開しています。この組織では、木造建築病理学の内容を縮約して、実務者向けの勉強会「住宅医スクール」を開催しています。こちらも参加者が多数おり、木造建築の改修技術に関する情報に対する実務者のニーズが伺えます。これまで名古屋でのみの開講でしたが、今年度より東京でも開講されています。詳細については、HPなどでお調べになって下さい。今年度アカデミーと住宅医ネットワークさんと連携授業を実施いたしましたので、ちょっとだけ書かせて戴きました。

アカデミーで発祥した「木造建築病理学」が、日本における木造建築改修のスタンダードになる(ちょっといいすぎかな?)ことでしょう。そこまでいかなくとも、既存建物の改修に関して、体系的な教育が多くの建築系教育機関でもどんどん実施されていくようになると、新築の技術体系だけではなく日本における改修技術体系の発展に繋がることでしょう。


本日のブログは、ここまで。
To be continued.